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2006年8月26日 (土)

マオ 誰も書かなかった毛沢東

「マオ」-誰も知らなかった毛沢東  ユン・チアン

毛沢東ものを読むのは、これで3冊目になる。最初は、以前のブログにも書いたがサンケイ新聞による「毛沢東秘録」、2冊目は、毛の主治医が書いた「毛沢東の私生活」。そいて今回が、大ベストセラー「ワイルドスワン」を書いたユン・チアンによる「マオ」だ。

「毛沢東秘録」は文化大革命の権力闘争を描いたジャーナリズムとしての作品であった。「毛沢東の私生活」は、自分の生活を犠牲にされ毛にずっと付き添わされた主治医の毛の王様生活(女好き、不潔)を描いた作品だ。(著者は発売3ヵ月後にシカゴで変死)

今回は、毛の若い頃から死ぬまでを、批判的な筆致で描ききった作品で、読んでいても身の毛がよだつ内容だ。

昨年のベストセラーであり、読もうと思いながら読めないでいたが、最近テレビで安倍官房長官が、本書を読んだと言っていたので、私も読んでみようと思い手にした。

ユンの「ワイルドスワン」でも中国国民のやりようのない憤りに涙したが、今回の「マオ」の迫力有る筆致には圧倒された。

毛沢東のように、まったく人間としての感情のない(かわいそうとか、同情するとか、人の気持ちを思いやるとか)人間が本当にいたとは思いたくない、と思わせる内容だ。中国人民が味わわされた苦しみなんて、きっと誰も理解できないと思われるほどの苦しみだ。毛は国民が1000万人単位で飢え死にすることをなんとも思っていない。それより、核開発の方が大切だと信じている。農民から作物を取り上げておき、肉も食べさせないのに、自分は毎日何皿もある豪華ディナーに、ダンスパーティー(美女の踊り子と)で、夜毎、踊り子の中から好みの娘を選びやり放題。(パーティー会場には、毛専用のそれようの防音付ベッドルームまで作らせている)

毛沢東は、人民から資産を収奪・搾取し人民を処刑する一方で、自分は快楽の追及をします。性的な面でも、超禁欲な生活を強要します(前作ワイルドスワンでもその描写があります)。夫婦でも1年間に一緒になるのは12間と定めます。

毛沢東が原爆開発より、人民の命の方が大切と考え、投下された資金を小麦にして人民に供給すれば、大飢饉で餓死した3800万近い命を救うに十分だったのです。

本書では、毛沢東の粛清や餓死させた人数は7000万人にとされている。ヒトラーはユダヤ人を600万に殺したが、桁が違う。毛は、自国の人民がいくら死んでもまったく気にしなかった。それどころか、世界一の人口なんだから多少死んでもかまわないと思っていた。(その代わり、自分が死ぬことにはたいへんな恐怖を感じていたようだ。自分の居所(人民が貧困にあえぐ中、たくさんの別荘を建てさせたが)には、核攻撃にも耐えられるシェルターのほか、通常の壁も分厚いコンクリートで作らせていた。

毛沢東に恐怖を感じるのは、粛清や文化大革命で、暴力を肯定し、人が苦しむのを見て楽しむところだ。暴行を加え、人が何時間も苦しみ死ぬのを写真に取らせて楽しんだり、処刑にしても、何年も生かさず殺さずで、痛めつけ精神を破壊させたりすることを支持していた。スターリンの銃殺刑やヒトラーのユダヤ人のガス室行きは、あってはならないことだが、毛沢東の行為は圧倒的にそれらの大量殺戮を凌駕している。動物同士の殺し合いでも、なぶり殺しで楽しむなんてことはないだろう。

毛沢東は人民の殺害は「きわめて必要なことである。これが適切に実行されて始めてわれわれの政権が安定すると繰り返しています。
日本の傀儡政権として満州国の国王となった溥儀は、ラストエンペラーとして映画にもなったが、中国の本当のラストエンペラーは毛沢東だ。たぶん、秦の始皇帝にでもなった気でいたのだろうか。

本書を読んで、毛の行動(核開発から女漁りまで)って、どこかの国にそっくりに感じた。人民が飢え死にしようと、そんなことお構いなし(餓死は些細なことと思っている)としている政権ってありますよね。毛も個人崇拝をさせていたし。

共産主義とか社会主義というのは、昔ひとつの理想卿でした。みんな平等の世界にあこがれていた人もいたはずですが、結局は本当の共産主義なんてなかったのではないかと思えてしまいます。ヒトラーは全体主義の権化のように言われますが、毛沢東やスターリンも共産主義者ではなく、全体主義者と言えるのではないでしょうか。

中国では、毛沢東の政策には良い面もあれば悪い面もあったとの評価のようですが、そんな評価では何千万の死んだ人は報われない気がします。

日本人は本書を読んで、中国人民の苦しかった時代を思いやる気持ちをもっと持つべきだと思いますし、中国人も自らの歴史の真実を振り返り、二度と全体主義に戻ることのないように、自由や平和、民主主義について考えて欲しいと思います。

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