結婚がこわい
「結婚がこわい」 香山リカ
少子化が問題になり、政府も担当大臣を置いて、対策を立てていますし、個人的にも少子化には気になることが多くありました。特殊出生率が下がり続けていますが、平均して一人の女の人が、生む子供の数を減っているより、そもそも結婚する人が減っている要因が大きくなっています。
生涯非婚者集団が人口の中で大きく形成されてきています。 本書は、臨床精神科医である香山氏が実際の女性たちを分析しているのだろうと思い、一度読んでみたかった本です。
なぜ、結婚をしなくなったのかを探るために読んだのですが、個人の心の問題から社会や国家の問題まで、昔からある問題から現代ならではの問題やお金の問題までとにかくやっかいな問題点が明らかになっています。というより、やっかいだと言うことがわかる本です。
結婚ということが、現代では純粋に「愛」の問題ではなくなってきており、様々な足かせが大きくなり、結婚に踏み切れない女性が多くなったということが結論でしょうか。本来は、「この人と一緒にいたい」といった要素の優先順位が下がっているということでしょう。
実際に香山さんのクリニックでも21世紀になって、悩みの相談は仕事のことから結婚のことに変わってきているようです。仕事の問題の裏にも結婚が隠れているようです。 現在では30代で結婚しない人の割合は25%前後になるかも知れないといわれていますが、未婚者の約半数は絶対結婚を否定しているわけではなく「結婚はしたいけれど、いい人が見つかるまではひとりでもいい」と思っているそうだ。ただ、そう願っているうちに、40代になり50代になり、そして生涯非婚へという道をたどる可能性も少なくありません。
しかも、ここに、自己実現のためには独身でいる方が社会関係や人間関係構築に強くメリットを感じている層もいますし、自由な生き方や行動の自由、拘束されない時間のために独身のメリットを感じる層もいます。
さらに、独身なら家族扶養の問題や経済的裕福さにメリットを感じる層もいるわけです。 AERAでの独身者に対して、結婚に対するメリット・デメリット感を調べているそうです。メリットは、「好きな人と暮らせる」「悩みを相談できる」「寂しくない」などどちらかという抽象的なものが多いのに対し、でメリットは「自由が奪われる」「相手の親戚との関係」「人と暮らすのは疲れる」など切実なものが多いのです。デメリットには結構リアルな嫌悪感がありそうです。今や、「結婚するとこんなステキな生活がありますよ」と言った夢のうたい文句に踊らされる人はいないと言うことです。
逆に言えば、若い人にとっては、結婚は今や夢でも希望でもなく、「脅し」になっているといえます。 キャリアを持つ女性の問題も悩ましいものです。「理想は高くないし、条件らしい条件なんて特にない」といいながら「ただひとつだけ、私のことを理解して受け入れてくれる男性なら」と言う女性たちの、その「ひとつだけの条件」ほど難しいものは実はない。
高卒女性のほうが、自分の生活のために結婚をするのですが、四大卒ともなると、専業主婦となるのなら、安心して子育てができるような給料は必須な条件となってきます。この裏には、「恋愛、結婚」よりも「勉強・仕事」のほうが大切なこと、価値があることだと、ひたすら教え込んできた社会にも問題がありそうです。学生時代は「週末には外出しないで勉強しなさい」と言われ、社会人になって数年経つと「週末にデートする相手もいないの?」と言われる。
片や、親や教師のような身近な存在は、昔のように価値観を押し付けることなく、人生の選択にかなり理解を示すようになり、自分の人生は本人にまかせるという面も多くあります。 また、現在の母子関係も影響がありそうです。いつまでたっても親と子供がべったりで、子供を大切にしすぎて、親離れ、子離れができないため、子供がいくつになっても大切に何でも世話を焼いていることです。子供にとっては快適すぎて、女性にとっては、親と同じように大切にしてくれる男性でなくてはだめだと思ってしまうようになっているようです。
昔は結婚と言えば、イエとイエどうしの関係が強く、「親と結婚」の関係も強く、結婚する側の子供にとっては、親の意向が強く、「あんな男との結婚は許さない」と言われれば、あきらめて親の言うとおりの相手と結婚するか、親を捨てて駆け落ちするかであり、人生の選択には誰かが傷つくことになり、それでも自分で「仕方がない、これでよかったんだ」と自分に言い聞かせようとしたものです。ところが、最近は、親の方が「一緒にいてもいいんだよ」「あなたの好きにしなさい」というようになっています。 結婚については、経済的な繁栄もおおきく影響しているようです。(私のブログで人口減少の話をしたことがありますが、古代ギリシャでの人口減少も経済的な繁栄が結婚をしなくなった要因と書きました)現代の日本では、衣食に不自由することはありません。親から大切に育てられ、衣食の糧を得るための訓練なしに、いきなり自分のやりたいことを見つけて、思う存分やりなさいと言われても、たぶんどうしていいのかわからないのが当たり前でしょう。
その中で結婚するときに生活レベルを落とさないことを考えるのが当然となるでしょう。パラサイト社会の山田昌弘氏の調査資料によると、東京では、結婚相手に年収600万円以上を期待する女性は39%に対し、それに応えられる未婚男子は3.5%だそうです。これが秋田になると、600万円以上の希望女性13.6%に対し、実際にその収入のある未婚男性は、わずか0.9%だそうです。香山氏は結婚生活にお金がかかるから、またはお金がないことが、若者から結婚を遠ざけるのかといぶかしがります。
本当はお金がないことより、お金がなくなることへの不安や生活レベルがダウンすることへの不安が結婚を遠ざけているのではないかと分析しています。 ところが、最近、流れが少し変わってきている。OMMGの調査によると、「速く結婚したい」が2003年の新成人で11%だったのが、2005年では23.9%に増加している。OMMGでは、自分たちの上の世代を反面教師にして、早婚と出産願望が強まったのでは、と分析している。
ちなみに香山氏のゼミの女性(大学3年生)28人に調査してみたところ、そのうち22人は「なるべく早く結婚したい」と答え、「仕事をしてからそのうち」は3人、「結婚はあまりしたくない」は1人しかいなかった。香山は、「あなたたちは親の庇護のもと、比較的ぜいたくな暮らしをしている。結婚してもその生活を維持することはむずかしい」と話してみたが、「収入の高い男性を探す」と言った学生はほとんどおらず、専業主婦願望の強い学生は全員「それでも我慢する」と答えた。たとえ生活は苦しくても、働くよりも働かないほうがずっとラクだと言ったのです。つまり、「ラクにまさるぜいたくなし」とでも言おうか、彼女たちの中では「生活水準」維持以上に、「ラク」が価値を持ちつつあるのだ。このように、ゼミで観察されたように「社会にでるのはこわいから、たとえ生活水準が落ちてもいいから、誰かと結婚して食べさせてもらいたい」という若い女性が本当に増えているのなら、それは、「経済的レベルが下がるくらいなら結婚したくない」と女性が考えていた時代よりも、「不安」「恐怖」の程度がさらに増大した結果かもしれない。
現在、政府では、猪口大臣が奔走して、少子化対策に対する予算獲得に励んでいますが、少子化問題の根は、本書のような結婚問題と不可分の関係にあり、問題解決には相当根が深いものあります。
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結婚がこわい 著者:香山 リカ |
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投稿: ASPのご紹介 | 2006年9月25日 (月) 11時50分