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2006年9月 3日 (日)

メガトレンド2010

「メガトレンド2010」 (パトリシア・アバディーン)

本書の書評を読んでいただく前に。

株主重視の資本主義をグローバル化として当然のことと考えていたり、株主資本主義により競争が現代社会ではやむを得ないことと考えている方は、本書は何の示唆も与えてくれないでしょうし、読むだけ無駄です。

資本主義がさらに新しい時代に入っていくのではないかと考えている方は以降を読んでください。

著者のアバディーン氏は女性なので、男性の私からみるといかにも女性が書いた著書だと思ってしまいます。男性の弱肉強食、思いやりの少ない世界とは少し違うと言う感じです。私はこれがまったく悪いことではないと思っています。本書を読んで、今までが異常であったと感じざるを得ないのです。多くの女性管理職や起業家が誕生してきましたが、人類の半分を占める女性の感性がビジネスの世界にも必要だと思います。

生き馬の目を抜くビジネスの世界に本書では「精神性」や「高い意識」という言葉が何度も出てきます。別に資本主義を否定しているのではなく、さらに現状の資本主義を超えた「意識の高い資本主義」を唱えているのです。

メガトレンドと銘打っているだけに、一時的なブーム(弱肉強食の現代資本主義)ではなく、真に社員や顧客(株主も)が満足できる大きなトレンドを示唆しています。

この流れをつかめるのは、女性の感性を持った著者が当然の帰結であると思われます。

また、本書を日本に伝えるために翻訳をしているのが、経沢香保子(トレンダーズ代取)であることは象徴的なことです。

内容を紹介しましょう。

「人間の意識なくしてビジネスに創造はない」といいます。意識は今や、資本、エネルギー、テクノロジーのような現世の財産と同じくらい、ビジネスにとって貴重なものになっているとします。

最も注目すべきメガトレンドは「精神性(スピリチュアリティ)です。精神的なものを包含していると著者が考えているものとして、①意味と目的、②思いやり、③意識、④貢献、⑤幸福、です。どの言葉にも共通しているのは、目に見えないものから来ていて、目に見えないものを大切にしていることです。

ミルトン・フリードマンは、「ビジネスの社会的責任は利益を増大させること」と明確に述べましたが、今や資本主義の「意識」の分岐点にあり、これまでの資本主義の払った代償に気づいてきているのではないでしょうか。その流れを受けて、結果的に「意識の高い資本主義」を追求する姿勢、つまり誠実さ、透明性、賢明な統治、そしてよりよい高い社会環境基準を追求しようという姿勢が勢いづいて来ています。今、新しい、より賢い資本主義が生まれつつあります。私たちが大切にしている価値観と利益の創出が両立する資本主義です。意識の高い資本主義が意味しているのは「何が何でも利潤を追求する」という(筋が通らないのはもちろん)意識をもたない哲学の耐え難い代償に私たちが気づきつつあるということです。

意識の高い資本主義は、社会、経済、そして精神の三つをダイナミックな基盤とする、自由企業を変革する動きなのです。

メガトレンドとして外せないのは、LOHASです。これは前代未聞の巨大市場になるはずです。資本主義に高い意識が入ってくるように、消費者も高い意識をもってロハススタイルを生み出しているのです。ロハスの9割は、自分たちと価値観を共有する会社、あるいは自分たちの価値観を反映している会社から買うことを好んでいます。

かつて従来のアナリストは、ハイブリッドカーに経済的側面から、ハイブリッドカーの支払うプレミアム価格から人々は慎重になると予測していました。しかし、意識の高い消費者は、ハイブリッドカーを何ヶ月待っても購入しだしました。米国では、ハイブリッドカーを出しているトヨタ、ホンダ、フォードはシェアを伸ばしま

すが、ハイブリッドに懐疑的で生産を躊躇したGMはシェアをダウンさせました。消費者の高い意識が単なる価格で選ぶことから、意識に対してコストを払うようになり、消費者の高い意識についていけなくなった会社は利益も上がらなくなってきているのです。

企業内にも「精神」(スピリチュアル)を大切にする企業が増えてきています。朝から夜まで馬車馬のように目の前のことをこなすのに精一杯になってきている現状です。(リストラなどで、人を削減し、その分生き残った社員が大量の仕事を抱えてしまっているのは米国も日本も同じです)米国では、社員に瞑想の時間を取ったりして、精神を安定させ、また日常から離れることによって、仕事全体を俯瞰できる精神を持たせるようにしている会社が出てきました。一見、膨大な業務量を抱えている社員に瞑想の時間を作るとは生産性を低下させるように思えますが、事実は逆であり、生産性が向上したり、離職率が低下したりしているようです。精神性を要請することは、その個人だけのものではなく、たとえそれ自体で素晴らしいものであっても、ひとたび最高の訓練がなされれば、精神は業績や株主の価値観を後押しするのです。

最後に、大上段ですが資本主義のありかたについて語ります。自由企業が成長するためには、増大する市場が必要になります。発達した世界の成熟経済は穏やかな成長の可能性しかもたらしません。そこで第三世界の繁栄を促進することが必要です。それは搾取では繁栄をもたらしません。政府間の援助も汚職にまみれています。

意識の高い資本主義による企業活動が必要となるのです。そして私たち自身には資本主義をよりよく変えていく力があるはずです。自分の年金基金に要求したり、ショッピングはフェアトレード商品を買うとか、同僚に敬意を払う、そして導く、などなど。

われわれは真実を受け入れるために心を開くべきです。時は移り変わっています。

企業の「ゲーム」は終わりです。自由意志の名のもとに精神が認めたもの、つまり資本主義の影の部分である貪欲や不正行為は今や明るみに出ています。

しかし、誰もそれを望みません。なぜなら、あまりにも犠牲が多すぎるからです。それは本来の自分ではないのです。

ビジネスで精神性を探求する時代なのです。

******************************

「精神的な満足」と「経済の効率性」の美しい両立はあるのです。

ビジネスパーソンが実は心の奥深くでは気づいていたけれども、触れてはいけないと思っていたことが、本書では語られています。

本書はこれからのあるべき資本主義を語っています。最初に女性らしいというようなことを述べましたが、奴隷のように働いている男性からは言いにくかった心の叫びがここに語られているような気がします。

本書の書かれた新しい資本主義を無視すると、相当痛いしっぺ返しがくると思います。

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著者:パトリシア・アバディーン
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