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2006年9月 2日 (土)

萌え経済学

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「萌え経済学」 森永卓郎

萌えやオタクを一番熟知している経済者(?)の森永氏の名作です。誰でも、「萌え」が流行っていることは知っていても、本当に「萌え」を説明できる人は少ないのではないでしょうか。森永氏はご自身でもくだらないもの(失礼!)を蒐集しているコレクターですし、自ら秋葉のメイド喫茶にまで行くような人ですから、萌を勉強するには最適な本です。

「萌え」とはいったい何なのでしょう。

「萌え」とは、アニメなどのキャラクターに恋をすることだ。恋をするというのは、単に好きだということではない。キャラクターに対し、まるで人間と同じように恋をするのだ。人は恋なしには生きられない。これまでも無数の人が恋に生き、恋に死んでいった。しかし、人類の歴史のなかで、初めて人間が生き物でないものに恋することを始めた。それが萌なのである。

萌えがうまれた背景には2つあるといいます。

1つは供給側の要因です。日本のアニメは1990年代半ばまでに4つの点でリアリティを獲得して行った。

    戦うあるいは働く理由として「愛する女性のために」という理屈付けを開発したこと。

    女性はわがままで気まぐれな存在で、そう簡単に男性の思い通りにならないという事実を受け入れたこと。

    肉体的に触れ合いがなくても、遠くからそっと眺めているだけで心の触れ合いによる恋愛は成立するという原理を取り入れたこと。

    漫画のような単純な描画から、肉体的な接触から得られるのと同じ性的興奮を引き出したこと。

2つめは需要側の要因です。

一方いくら恋愛の対象となるキャラクターが育っても、実際にキャラクターに恋をしようとする人が現れなければ萌えは誕生しない。しかし、近年の日本には、萌えに走らざるを得ない男性たちが急増しているのだ。それは終身結婚制と終身雇用制の崩壊が原因である。ほとんどの人は性的関係を持つパートナーを欲しがる。しかし、恋愛はそもそも弱肉強食だ。男性も女性も美しい魅力的なパートナーが欲しいのだ。逆に言えば、魅力に乏しい人は、市場原理に任せておくと、一人もパートナーを得られないことになる。(昔は見合い結婚制度があり、適齢期になると自動的に性のパートナーが得られた)

現代は金融ビッグバン、労働市場の流動化、規制緩和などで市場原理が浸透し、実質賃金が増えたのは2割だけで、6割は実質賃金が下がってしまった。勝者が独り占めになったのである。実は同じことが恋愛や結婚の世界でも起こっている。

今では女性の職場進出で自立を果たし、結婚に依存しなくてもよくなった。また、終身雇用が崩れたことで、女性にとって自分の人生を男性の雇用に頼れなくなった。そんな男性に自分の性愛と相互理解を託すなど危険になってきた。さらに、結婚のなかにすべての愛と幸せがあるというマインドコントロールが通用しなくなってきた。性愛には性愛だけのベストパートナーがいる事実に気づき始めた。

この環境変化によって結婚できない男性の増加が明確に現れてきた。30代前半の男性の未婚率は1980年には22.8%だったものが、2000年には45%に達している。全国を先取りしている東京では55.7%に達している。

時代の環境が大きく変化しているが、恋愛のパートナーが欲しいという欲望はなくならない。そこで崖っぷちに追いつめられたイケメンでない男たちが気づいた究極の選択肢が、キャラクターに恋すること。萌えなのである。

みなさん「萌え」をキーワードに使いますが、もともとは「燃える」という言葉の漢字変換で誤って出てきた「萌える」が徐々に広まってきたといわれている。オタク、フェチ、変態といった差別的な言葉を投げつけられてきたマニアたちが「萌え」という言葉を得て、これまでとは異なる新しい文化の世界を創造し始めています。

フィギュア萌え、メイド萌え、ドジッコ萌え、ナース萌えなどさまざまな萌えが存在する。ただ、萌えがフェチや変質者と決定的に違うのは、そこに性的行為とか暴力とかが一切存在しないのだ。萌える人々は、社会のルールを守り、どこまでも控えめでおとなしく、萌えの対象をただ遠くからそっと眺めているだけで満足してしまう。パステルカラーのニーズが「萌え」の特徴なのだ。

本書では、萌えに対する誤解を解いてくれるのではないのでしょうか。いくらがんばっても女性に相手にされない男性はいくら努力しても無駄だと悟ってしまうのだ。彼らは必死に考えます。そして結論を出すのです。「電波男」には「二次元だっていいじゃないか。オタクだもの。」という言葉が出てきます。単にキャラクターを人間の女性の代わりにするということではありません。人間の女性への興味を捨てて、キャラクターそのものを本当に心から愛するようになっているということなのです。

そんな馬鹿なと思われるかもしれないが、女性に相手にしてもらえない極限状況の中で愛の対象を切り替えることは実際に可能なのです。人間の脳は、その切り替え能力を持っているのです。

本書で「萌え」について知れば知るほど、切なくなってきます。時代環境や経済環境が変化してきた結果でしょうが、やはり違和感を覚えます。本来、人間は男と女で、愛し合い協力することなのではないでしょうか。でも格差社会が叫ばれている現代でなぜか無力感を覚えます。

最後に言っときますが、本書は萌えとは何かを教えてくれるだけじゃなく、タイトルどおり萌え産業やネット市場に渡るまで経済的視点を与えてくれます。

萌え経済学 Book 萌え経済学

著者:森永 卓郎
販売元:講談社
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