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2006年10月 9日 (月)

伊藤元重のマーケティング・エコミックス

「伊藤元重のマーケティング・エコノミクス」  伊藤元重

著者の伊藤先生は、日本が誇る大経済学者の一人だと私は思っているのですが、今までの著作やテレビでのコメンテーターとしても、経済を非常にわかりやすく教えてくれることで有名です。私も講演会に行ったこともありますが、やさしそうな人柄で、他人にやさしく本書も含め経済解説にもその人柄が出ているようです。

著者は、昔からセブン&Iの鈴木敏文CEOとも親交もあり、流通の現場に強く、経済理論と現場を結びつけた話をしてくれます。本書でも、ミクロとマクロの両面から市場や経済の動きを追っています。

現在、日本市場は非常に面白い動きを見せています。バブル崩壊や不良債権問題からの出口が見えてきた中で、次々に新しい業態が生み出されています。少子高齢化による市場の成熟化が進むとはいえ、そのような時代にあったビジネスモデルを見出して高い利益率をあげる企業も増えています。本書では、いろいろな商品やサービスの事例を取り上げながら、成熟市場のビジネスモデルを紹介してくれます。

さて、消費市場が成熟化とはどういうことなのでしょう。成熟化という意味の中では、人口が減少していく中で市場規模が縮小していくこともあるでしょうし、消費者の所得水準が高くなる中で、単なる商品ではなく、より高いレベルの価値を求める消費者が増えているということも意味もあるでしょう。本書ではいろいろな事例を読むことで、今の市場の変化を読み取らせてくれます。みなさんが、いつも見慣れている風景の中にいかに新しい面を見つけていくかを教えてくれます。消費の現場では、コンビニの変化や健康飲料で活躍する飲料メーカー、ストレスフリーを追及することで急拡大するJR東のSUICAなどの事例を深堀し、基本原理を見えるようにしてくれます。

昔のように、生産したモノをどうやって売り込むのかと言うマーケティングではなく、顧客がどのような価値を求めているのかという点から先ず考えを起こし、それにあったビジネスの仕組みを考えることが重要になってきます。わかっていてもなかなかできないもので、バブル崩壊から15年以上経っても、右肩上がりの時代に縛られていたりします。ただ一方で、古い価値観を断ち切った企業の中から驚異的な利益を上げるところもあります。成熟市場といわれる現代市場の実態をとらえ、「流通」という手段を乗り越え、「マーケティング」という広い視点から市場を見直すことが重要だといいます。「流通」=「流して通す」だけでダメなら、どうしたらよいのでしょう。メーカーも小売・卸も、そしてサービス産業も、「付加価値」を提供しなくてはなりません。どのような価値をつけていくのかが鍵になります。付加価値というものはとらえることが難しく、消費者が感じる便利さや安心・安全から、ファッションやトレンドに至るまで、様々なものから付加価値が生まれるといいます。

本書では、経済のサービス化傾向(単にモノでは中国で作られるほうが安かったりします)、コンビニや駅ナカを例に取り、時間という価値の捉え方などを解説してくれます。住宅リフォームの話の中で、水周りのリフォームが多いという話があるのですが、そこで「私も時々出ているテレビ報道番組で若い女性のアナウンサーの人が長いときには3時間近くお風呂に入っている」との著者の言葉が出てきますが、テレ東の大江麻里子アナのことですね。こういう女性が増えているとリフォーム需要が堅調であるとしています。

本書で面白いと思ったひとつに商業施設の立地問題があります。10年くらい前には、小売業の郊外化という話も多く語られ、著者も流通の中心は郊外に移っていくだろうと思っていたそうですが、都心部の地価の下落で、都心部に購入しやすい価格のマンションが販売され「都心回帰」が言われだしました。商業立地の問題も「都心部か郊外か」の方向性が見えなくなってきています。確かに、東京や名古屋、大阪では都心立地が進んでいますし、その動きは顕著です。しかし、著者はここ数年の全国的な動きを見ると、そうした見方は少し修正しなくてはいけないと考えます。人口分布の状況を考えれば、今後、さらに郊外の商業が活性化する可能性が高いというのです。ニューヨークと比べて解説してくれます。ニューヨークはマンハッタンにも大きな人口を抱えており、都心回帰となってきた東京などとよく似ています。しかしこの事実にもかかわらず、ニューヨークの商業立地を見ると、郊外の大型商業集積が充実している。マンハッタンにある店は日常生活に関わる店というよりは、ショーウィンドウ的な基幹店や観光客目当ての店であり、マンハッタンに住んでいる人は買い物をしに車で郊外に行くそうです。商業は土地集約的な産業であるので、高い土地では高価な商品を大量に販売しないとやっていけないことを考えると、都心回帰とばかりはいえないですよね。

最近は郊外への大型店規制がかけられ、町の中心部の活性化する方向で考える人が多いようですが、本当に生き残れるのか考えさせられます。

本書では最近のアジアでのコンビニ戦略や最近上向いてきているデパートの戦略など面白い話がてんこ盛りのどこを読んでもためになる本です。

伊藤元重のマーケティング・エコノミクス Book 伊藤元重のマーケティング・エコノミクス

著者:伊藤 元重
販売元:日本経済新聞社
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