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2006年11月26日 (日)

ゴールデン・サイクル

「ゴールデン・サイクル」   嶋中雄二

本書は、足元で始まろうとしている日本経済の壮大な復活劇を主として景気循環論の視点から論じたものです。

(06年4月までに書いて、5月刊行なので、ゼロ金利解除前に書かれた事を

考えて読んでください)

2005年内に在庫調整が完了し、3~4年周期のキッチン・サイクルが上昇基調を継続する一方、戦後第6波のジュグラー・サイクルの上昇基調ともいうべき、空前の投資採算水準に見合った新たな、10年周期的な設備投資の拡大局面が始まろうとしています。

このジュグラーの戦後第6波は、液晶・プラズマTVやDVD、ハイブリッド・カーといった新・三種の神器とも言うべき耐久消費財普及とともに到来しつつあります。そして、この上昇波は、国内工場立地の増加・都市再生事業の本格化・団塊の世代並びに団塊ジュニア人口の移動などにその一端が見られる、クズネッツ・サイクルないし建設投資循環の20年周期の上昇局面が03年より開始されていることによって、より強化されようとしています。

地価の価格の動きを見ても、05年までと06年からとでは、土地という日本経済の根幹に関わる前提が異なってくると著者は見ています。その意味では、私たちは今、日本経済の歴史的局面に立っているのではないかと。

06年には、もう一つの波であるコンドラチェフ・サイクルが、その50~60年周期の回転により、再び戦後の復興期と同様の位相に立ち戻ってきたと解釈できる状況をもたらしつつあります。著者は、06年近辺を境に、緩やかなディス・デフレ(脱デフレ)の時代が始まり、その流れは、20~30年の時間の経過とともに、インフレへと姿を変えていくと見ています。

こうして、短期、中期、長期、超長期の(1)キッチン、(2)ジュグラー、(3)クズネッツ、(4)コンドラチェフの全てのベクトルが上向く年となり、著者はこの現象を、本書のタイトルにある「ゴールデン・サイクル」と命名しています。

日経平均と6大都市市街地価格指数は、おおむね1年半程度のタイムラグを隔てながら、総じて株価が地価に先行する関係があります、今年前半の株価の上昇スピードと合わせて考えれば、06年3月末の地価が1991年3月末以来15年ぶりのプラスを記録し、さらにその後も上昇し続ける確率が極めて高いといえます。

現実的に、06年1月の公示地価では3大都市圏の商業地は15年ぶりのプラスとなっています。つまり、06年という年にようやく、地価が当然のように下落し続ける「失われた10年(15年?)」をついに脱出して、竹中平蔵氏のいう「もはやバブル後ではない」状況に入ってこようとしているのです。

03年以降、工場立地件数や建設着工床面積などに動向が見られ、06年からの地価浮上により、人口動態的にも団塊の世代とそのジュニア世代の大量移動のパワーを内に秘めて、おそらく2012年頃までは上り坂と目される建設投資循環の本格的な上昇波へと展開していくのではないかと。

しかし、06年からの中期的な意味での主役は、建設投資というより、むしろ民間企業設備投資であるといったほうが正確かもしれません。

ところで、05年は日本が初めて「人口減少社会」に突入したことが明らかになりました。著者は、人口減少が日本経済の潜在成長力を低下させ、悲観的な予測に与することはしていません。デニソンによると、53年から71年の日本経済について、労働と資本の寄与よりもはるかに大きな寄与度である全要素生産性(TFP)の上昇率が高いことを示してくれました。80年代後半のバブル経済時にもTFPの上昇率が寄与していることはあまり知られていません。資本ストックばかりだけでなくTFPの伸び率も設備投資の中間循環、すなわちジュグラー・サイクルの位相とともに上下しているのです。今後、2010年にかけて設備投資比率が再び20%台近くまで高まれば、労働人口の減少を考慮しても、TFPや資本ストックの上昇率アップにより、日本経済の潜在成長率は4%台になってもおかしくないといいます。

経済成長率は、資本投入と労働投入並びに残差の各要因の貢献度を、日本経済研究センター(金森久雄)の調査では、成長への貢献への寄与度の最も高いのは残差要因であるTFPであることがわかっています。内閣府の統計でも90年から04年の潜在成長力は平均1.8%と計算されていますが、TFPの寄与度は0.9%ポイントとなっています。直近でも潜在成長力の半分はTFPによって稼ぎ出されていることになっています。

TFPは狭い意味での技術革新ではなく、イノベーションの経済効果を表しているといえます。政府は、06年1月の中期見通しの試算では、06年から11年まで実質経済成長率が平均1.8%、名目成長率2.8%と見込んでいますが、昨今の構造改革、新・3種の神器の普及、設備投資の上昇を考えると、著者はさらに高い成長を見込むとみています。

また著者は経済再生に必要なものは、まず「都市再生」を提言しています。生活者の視点からの経済再生が必要だと。それは4つのKだそうです。そのKとは、都市の「景観」、「環境」、「観光化」、「高齢化」だそうです。本書を読んでいただくとなるほど、4Kかと思わせます。

本書を読んで、先ず思ったことは、安倍首相ってこの本を読んで、イノベーションによる成長戦略を言ったのかなと思ってしまいます。イノベーション戦略とは、まさに本書で説明されているTFPを高める戦略であり、人口減少社会でも経済成長を成し遂げようとしていることですよね。

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