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2006年12月31日 (日)

日本経済は本当に復活したのか

「日本経済は本当に復活したのか」  野口悠紀雄

2007年は、株価でみれば1万7千円を越えて終わりました。ゼロ金利も解除されました。いざなぎ景気も越えました。でも、人々にとって実感のない景気回復と言われています。本書は、野口先生がそんな経済をどう見ているかを語ります。
著者は、10年以上かかった低迷期を脱したという見方には組しません。企業利益が堅調にあるのは事実ですが、次の点に留意しなければならないと。
第一には、株価上昇率が利益増加率より高く、バブルを考えないといけません。第二は、増益が一部の業種に偏っていることです。第三に、最も重要なこととして、企業業績の回復は、循環的・需給的な要因によるものであり、構造的要因によるものではないこと。
つまり、企業収益が回復したといっても、鉄鋼をはじめとする古いタイプの資源・素材関連産業が一時的要因で息を吹き返しただけだといいます。

著者は構造的な景気回復でないと言っています。上で述べましたが、日本の経済回復は第2次産業の回復です。今後、金融やサービス、ITの分野など第三次産業が伸びなければならないはずです。2次産業は、今後、中国など次の世代を担う国家に移るはずです。まして、インドなどは、第2次産業を越えてIT分野を伸ばしています。中国も、いつまでも工業だけではないと理解しているはずです。流通などは日本よりも、改革を進めようとしているのではないでしょうか。
著者は、金融分野の例を上げます。メガバンクのMUFGは過去最高の利益を上げましたが、実は本業の貸し出しでは利ざやが少ないものです。なぜかというと、リスクを評価して貸し出す能力がないからだといいます。金融の基本的な能力が欠けており、グローバルな世界で戦えるのでしょうか。第三次産業の中核的な分野である金融はますます欧米と差がついていくかも知れません。
また、アメリカでは、グーグルやマイクロソフト、シスコシステムズ、インテル、ヤフー、アップルなど、未来を開く企業が多数出てきます。
トヨタがGMを抜いてしまうとか、もうアメリカの自動車産業は終わりだという話はよく聞きますが、アメリカは自動車産業にとって変わる産業が育っています。まさに、構造的な変化が起こっているのです。
これに対して、日本はどうでしょう。結局、今、経済が好調なのは、鉄鋼などの素材産業や自動車産業、機械産業などで、未来を開く産業とはいえません。今、好調な産業は、きっと、中国や韓国を初めとする国々に移っていく産業のはずです。
20世紀産業が好調で喜んでいる場合ではないのです。5年後、10年後を考えると、21世紀を担う産業の育成が求められています。

本書で面白い指摘は、流通と少子化についてです。
人口が減少していることは事実ですし、それを悪いことにようにいう風潮に対して異議を唱えています。いまさら、少子化対策を取ってどうなるかと言っているところは面白いです。今、少子化を止めて子供を増やすということは、逆に、非生産人口を増やすことになり、増えた子供が生産性を増やす頃は、20年以上先のことであり、それまでの20年間は、逆に歳費が増えることをどう考えるのかと問います。少子化が急に止まる事は無いのだから、それにあった社会・経済の構造を築いていくべきで、少子化が悪いことばかりではないはずだと。国のGDPが減っても、一人当たりのGDPが増えれば、国民は幸せになるはずです。
そのなかで、流通は非常に非効率な部門であることは日本人なら皆、認めることでしょう。
しかしながら、今、大規模店舗法に変わり、あらたな規制が作られ、大規模な商業施設を規制し、寂れた駅前商店街を守ろうとしています。規制は、既存の人々の暮らしを守りますが、そのためのコストは商品価格になってわれわれに戻ってきます。人が減っていく中で、効率的な流通を生かさず、既存の労働者を守ろうとするなら、当然、人が必要になりますし、国民負担も増えます。
少子化にあわせて、効率をあげる、つまり生産性を上げる方法はあるのです。
本当に生産性をあげて経済を活性化させるという安倍政権の政策がありますが、構造的な改革が本当に求められてりと感じます。安倍総理の掛け声だけで終わらないことを願います。

日本経済は本当に復活したのか Book 日本経済は本当に復活したのか

著者:野口 悠紀雄
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