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2007年1月 7日 (日)

富の未来

「富の未来」  アルビン・トフラー、ハイジ・トフラー

かつて「第三の波」などの著書で未来を予言した著者ですが、それが、今や現実となり、現代に起きている事象を幅広く捉えて見せてくれています。
30年近く前になるでしょうか、昔、ダニエル・ベルという社会学者が「脱・工業化社会論」を発表して以降、本書のトフラーはじめ、堺屋太一の「知価社会」やレスター・サローの「知識資本主義」など数多くの著作が生まれていますが、本書は、まさに、時代が音を立てて変わろうとしている最中に、工業化社会以降を総括したような内容になっています。

トフラーは、本書で取り上げる革命的な変化は、産業革命に匹敵するか、それを上回るほどの大規模な激変であるといいます。相互に関係がないように思える何千、何万もの変化が積み重なっていく、新しい経済体制となり、産業革命によって、「近代」が生まれたように、まったく新しい生活様式と文明が生まれる、そういう激変であると。

本書のタイトルで「富」という言葉を使っていますが、ここでいう「富」は金銭だけを意味するものではありません。生活を支えているものには、もうひとつ、ほとんど探求されていないが、じつに魅力的な並行経済があると言います。この並行経済でわれわれは、金銭を使わないまま、多数の必要や欲求を満たしており、この二つの経済、金銭経済と非金銭経済を組み合わせたものを、本書では「富の体制」と呼んでいます。

新しい富の体制は、めったに登場しないし、登場するときには単独では現れません。それぞれの富の体制には、新しい生活様式、いいかえれば新しい文明が付随します。企業組織が変わるだけではなく、家族制度、音楽と美術、食料、ファッション、人の美しさの基準、価値観、宗教観、個人の自由についての考え方も変わります。
よくも悪くもアメリカは、いま、富の創出の革命的な方法の中心に築かれた文明の最先端にいます。本書では、多くをアメリカの事例を元に(もちろんアメリカ人の読者を意識して)書かれています。アメリカの革命的な富の体制とそれに伴って起こった社会と文化の変化は、世界的な反米感情となっていますが、しかし、そのアメリカもいつまでも、この革命の先頭を維持できるかはわからないのです。

富の移動という観点でみると、人類の歴史上最大級の移動が起こっていると言います。それはアジアへの移動です。欧米が圧倒的な経済力を長期にわたって誇ってきたために忘れられていることが多いのですが、わずか500年前、技術力がもっとも高かったのは、ヨーロッパではなく、中国であり、世界経済生産の65%をアジアが生み出していたのです。1980年代に中国政府が共産主義者らしからなく、富の追及を認め、奨励する政策をとるようになって以降、90年代には水門が全開になりました。2003年までに、アメリカ企業は総額450億ドルを投資し、さらに中国製品に巨大な市場を提供しています。この2003年がアジアにとっての分水嶺となりました。中国にシンガポール、韓国、台湾を加えると、購買力平価で換算したGDPがヨーロッパの5台大国(ドイツ、フランス、イギリス、イタリア、スペイン)の合計に等しくなっています。もちろん、この数字には日本もインドも加わっていません。
日本やインドを加えると、アジア6カ国で、EUに加盟する25カ国の合計より、そしてアメリカより、購買力平価で換算したGDPが3兆ドル多くなります。
世界的に見て、富の中心が、そして富の創出の中心が大きく移動してきたのです。経済の中心がまずは中国から西ヨーロッパに移動し、次にアメリカに移動し、今では歴史の大きな円運動が完成して、数世紀ぶりにアジアに戻ろうとしているのです。

本書では、単に富の中心が変わっていることを言っているのではありません。工業化時代は石油が中心でしたが、知識がそれにとって変わろうとしています。石油は使うとなくなりますが、知識は使っても減るものではありません。逆に増えていくものです。既存の経済学は資源配分に関する科学だといわれていますが、もはや経済学の基盤も通用しなくなってきています。

全体を整理すると、第一に世界ではいま、富を生み出す方法の歴史的な変化が起こっている。これは新しい生活様式、新しい文明の誕生という大きな動きの一部であり、今のところアメリカがこの動きの最先端に位置している。
第二に、企業や経済専門家が詳細に渡って検討している「基礎条件」は表面に近い部分にあるものであり、そのはるか下に「基礎的条件の深部」がある。そして時間、空間、知識を中心に、基礎的条件の深部にある要因との関係をわれわれは革命的に変化させている。
第三に、金銭経済はもっと大きな富の体制の一部でしかなく、ほとんど注目されていないが、「生産消費活動」と呼ぶものに基づく世界的で巨大な非金銭経済から提供されている価値に依存している。

本書では、日本についても1章を割いて、日本に残る古い体制についての記述があり、興味深く読むことが出来ます。新たな時代に適応するための軋轢を感じられます。
本書は大作で、話があちこちに飛びまくりですが、知識やプロシューマーという概念が目に焼きつきました。時間があれば、一度は読んでおいて損はしない本だと思います。

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著者:A. トフラー,H. トフラー
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