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2007年2月27日 (火)

中国人のMaid In Japan好き

最近テレビで中国人が日本観光にやってきて、秋葉原で日本製の家電製品を一生懸命探しているのを面白く見た。子供への土産を探していたようで、結局、日本製はなかったようで、仕方なく、タイ製のSONYのヘッドフォンを買っていた。
今や、日本製の電化製品は少ないよね。
シャープの液晶テレビのMaid In Kameyamaや、パナソニックのプラズマの尼崎製とかを探さないと、安い値段のものは、だいたい東南アジア製です。
日本に旅行に来るくらいの中国のお金持ちは、秋葉原でも金に糸目をつけず、「とにかく世界で最新のデジカメがないか」と聞くそうです。普通のデジカメなら中国でも買えるでしょうから、日本にきた限りは、世界で最高のものを求めているようです。
なんだか、バブルの頃に、日本の若い女性がヴィトンやエルメスを一人で2個も3個も買い漁っていたような雰囲気です。

ところで、食に関しても同じで、高級食材を求めています。
堺屋太一の本で読みましたが、島根県農協が中国に米を販売しているそうですが、日本の高級な米だといって、中国人の米価格より、6倍の値段で売っているそうですが、飛ぶように売れているそうです。和食ブームですから、米もMade In Japanがいいのでしょうか。米だけでなく、野菜も日本の高級野菜が売れているようです。
日本のように丹精こめて、必要以上かもしれないコストをかけた農産物も、カネのある中国人にとっては、それをたべることがステータスなんですかね。
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2007年2月25日 (日)

人間を考える経済学

「人間を考える経済学」  正村公宏

自然科学は、宇宙科学から生命学などとつながりが深くなってきて、また、ギリシャ時代のように哲学のようになってきていると私は感じています。本書を読めば、経済学においても人間の本質やサステナビリティを考える時代になってきて、哲学的になってきたと思います。というより、哲学なくして経済学も成り立たなくなってきていると思います。
著者は、あらためて経済学の基礎石の置き方を根底から検討しなおしてみようと考えて書いたといっています。
社会のあり方は経済のあり方に影響を与え、経済のあり方は社会のあり方に影響を与える。とくに経済は、人間が生まれて育つ環境(自然と社会と文化の組み合わせ)を大きく変化させることによって、将来の社会のあり方に決定的な影響を与える。それは、次の時代の経済のあり方を強く規定し、人間が生まれて育つ環境を更に変化させる。
著者は、現代社会が解決しなければならない問題をあきらかにし、選択されるべき制度と政策を提案することは、経済を研究する人間の責任であるといいます。本書のタイトルも「人間を考える・・・」であり、副題も「持続可能な社会を作る」とあるとおり、著者の経済学に対する考え方が現れています。

経済体制においては、資本主義が社会主義に勝ったというのは軽薄だといいます。経済の自由は、効率への誘因を刺激する基礎条件であると同時に、政治と社会と文化の自由の基盤である。しかし、市場機構は万能ではない、市場経済は重大な欠陥を持つ。マクロの目的意識にもとづく適切な方法による制御が不可欠であると。20世紀の経験は、自由放任型の市場経済は返って自由な社会の基盤を破壊すること、分配の公正と生活の安定を目指す改革こそが経済を安定させると同時に社会の統合を強める効果を持つことを示している。
経済学者は、現実が提起するさまざまな問題を的確に受け止める鋭敏な感覚、さまざまな制度の組み合わせを絶えず見直す知恵、マクロの主体である政府の政策の有効性を高めるねばり強い努力が必要だと。

サッチャーの経済改革の理論的支柱となったハイエクの経済理論ですが、ハイエクの「隷従への道」の中で、「市場経済に全てを委ねるべきだという自由放任の主張は誤りである。自由主義者の硬直した自由放任論は返って自由主義を傷つけた」と書いているそうです。
私は、勉強不足でハイエクこそ、英米の自由主義経済の支えであり、シカゴ学派の祖であったくらいにしか思っていなかったのですが、自由といっても放任ではいけないと言っていたのを知りませんでした。

著者は、経済への人間の関わり方を変え、文明のあり方を考える必要があるといいます。
地球規模の構造変動によって経済の不安定性が増幅されているだけに、マクロ経済政策の信頼性を高め、就業機会を保障する取り組みが不可欠であると。単なる規制緩和によって競争圧力を強め、価格破壊を推進すればあとは何とかなると考えてはいけないと、暗に英米や日本の経済政策を批判しています。
特に日本人の働き方を変える必要性を説きます。持続可能性を考えると、日本人の働き方は、働く人自身にとっても、家族にとっても問題です。日本の給与生活者の暮らし方は、家族の機能を低下させる作用をしてきた。生活時間と生活空間を作りかえ、子供の生活環境を作りかえることは、日本の最優先課題である。著者は、そのためには、糸口として労働基準法を変える必要があるといいます。
本当の国際競争力とは、ミクロで考えれば変化に対応する人間の能力であるが、マクロで考えれば、経済力を国民の生活の安定と向上のために系統的に使う知恵である。政府の経済政策と社会政策に不備があれば、ミクロが強くても、マクロの不均衡が拡大し、外国為替市場における自国通貨が急騰して、産業の競争力が一気に失われる。生活の質の改善を目指す共同事業を強化し、国内の総需要と総供給力の不均衡の是正をしなければならない。本当の国際競争力は、内外の諸条件の変動に対応する能力である。産業の活力の基礎は、社会の活力である。社会の活力を再生産するために、日本人の働き方を変え、多様な働き方を可能にする経済制度と経済構造を作り上げる必要がある。

本書は、単に経済書というだけでなく、一般人には、世界史の全体像を勉強しながら、経済の歴史を確認できたり、経済体制の勉強できたり、文明論があったりと、経済学の基礎をもう一度勉強できる書です。
一気に読める面白い本です。久々の5☆です。

人間を考える経済学  持続可能な社会をつくる Book 人間を考える経済学 持続可能な社会をつくる

著者:正村 公宏
販売元:NTT出版
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2007年2月24日 (土)

世界の日本人ジョーク集

「世界の日本人ジョーク集」 早坂隆

「最先端技術の国」
●不良品
あるアメリカの自動車会社が、ロシアと日本の部品工場に以下のような仕事の発注をした。
「不良品は1000個につき一つとすること」
数日後、ロシアの工場からメールが届いた。
「不良品を1000個に一つというのは、大変困難な条件です。期日にどうしても間に合いません。納期の延長をお願いします」
数日後、日本の工場からもメールが届いた。それにはこう書かれていた。
「納期に向けて作業は順調に進んでおります。ただ、不良品用の設計図が届いておりません。早急に送付してください」

初っ端から、日本は先端技術を持つというジョークから始まりますが、最近のエレクトロニクス製品や自動車の不具合が頻発しており、ちょっと皮肉です。

日本の独創性のある製品も多いのですが、次のような感じも多いですよね。

●四段階
新製品が世に流通するまでには、全部で四つの段階がある。
まず、アメリカの企業が新製品の開発をする。
次にロシア人が、「自分たちは同じものを、もう既に30年前に考え出していた」と主張する。
そして、日本人がアメリカ製以上のクオリティの高いものを造り、輸出を始める。
最後に、中国人が日本製のものに似せた偽物を造る。

著者は、東欧や中東をよく回っている人らしく、アメリカや西欧で知られていない日本の見方も多く伝えてくれます。
イラクでは、自衛隊が復興活動に行きましたが、イラク人から日本への不平・不満が相当あったらしいのです。イラク人にとっては日本人は、超お金持ちで、自衛隊が来てくれたということは、サマワに近代的な高層ビルでも建つのかと思っていたらしいのです。
お金持ち日本のジョークとして次のようなものがあります。

● レストランにて
ドイツ人と日本人とイタリア人が一緒に食事へ行った。食後、三人はそれぞれこう考えていた。
ドイツ人は、割り勘にするといくらか考えていた。
日本人は、三人分払うといくらか考えていた。
イタリア人は、おごってくれた人になんと礼を言うか考えていた。

日本の経済システムについても面白いジョークもあります。かつてのソ連のゴルバチョフ書記長が、計画経済の抜本的な建て直しを図っていたとき、多くの経済学者を日本に派遣したという冗談ではない話もあります。

● 意見の一致
マルクスとケインズがあの世で出会い、そして激論を始めた。相反する思想を持った二人、やはり意見は合わなかったが、たった一つだけ結論の一致を見た話題があった。それは、
「自分の理想を体現した国家はどこだろうか?」
という問いであった。二人とも、
「日本」
と答えたのである。

日中関係についての面白いジョークもあります。
● 捕虜
西暦200X年、日本と中国の間でとうとう戦争が勃発した。
開戦当初、日本軍の優勢が続いた。
開戦から一週間。中国兵の捕虜が一億人出た。
次の一週間。さらに中国兵の捕虜が一億人出た。
翌日、北京から東京に向けて、無条件降伏の勧告が来た。
「どうです、まだ戦争を続けるつもりですかな?」

面白いジョーク満載ですが、著者の体験がたっぷり載っていて面白い本です。

世界の日本人ジョーク集 Book 世界の日本人ジョーク集

著者:早坂 隆
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2007年2月23日 (金)

質の経済が始まった

「質の経済」が始まった  日下公人

好況感のない景気回復といわれていますが、10年以上続いた不況で、日本はまだ危ないという人もいます。著者は、一刀両断にそれは間違っているといいます。
例えば、東京オリンピックのあった65年度から2002年度まで、38年間のGDPを全部合計すると、ざっくり、1京1409兆円あるそうです。これは凄い数字らしいです。一方、国家の財政支出を全部合計すると3000兆円になる。日本経済は悪いといいながらも、年間500兆円もの巨大なGDPが横ばいで落ちていません。これだけのGDPを毎年産出し、抱えながら、無駄さえやめれば、景気はたちまち回復するといいます。無駄遣いをする政治家とお役人が、半分くらいに減ってくれればいいのです。
政府は、それだけのGDPの中から、まず税金で2000兆円取り、そして借金で1000兆円と、約3000兆円を集めて使った。役人は、このうち2割や3割は無駄に決まっているといいます。
通らない道路や橋に兆円単位でお金をかけたり、官庁の仕事も、天下りの人件費や、不要な外注費、使途不明の住民対策費などなど無駄ばかりです。役人は、民間なら10万円で買うようなものを特別仕様だからと100万円でつくらせて買ったりします。無駄をやめれば税金をなくすことも出来るとまでいいます。
何より、日本国民と国家の貯蓄は1500兆円くらいあるので、1000兆円を年利7%の米国国債を買えば、毎年70兆円の利息が入ってきます。1500兆円分買えば、105兆円です。所得税は年間40兆円ですから、少なくとも所得税ゼロにもできるのです。

あまりにも無駄遣いが多すぎる例として、農業費をあげています。毎年国は2.8兆円、地方の農業費は2.7兆円、合わせて年間5.5兆円です。ところで農業の生産額は年間に10兆円です。専業農家は44万戸しかないのです。1年に300万円あげた方がずっと安い。40万戸としても1兆2000億円にしかなりません。いかに、農水省の役人が不要かがわかります。
このような無駄を省けば、ずいぶん国民が助かるはずです。

さらに著者は、今後、日本はますます発展すると予測します。著者は日本は「風流産業」で景気が直るといいます。かつて、日本の工業製品のスペックはオーバークオリティといわれたりもしましたが、いまやグローバルスタンダードクオリティになってきています。工業製品だけでなく、今後サービス業においても日本人のクオリティの高さが求められると考えています。
もともと日本人は芸術家で、芸術国家だといいます。その日本人の「芸術力」をアメリカ人が感心して、日本の自動車は風流だ、ハイテクではなく芸術だ、工業製品を一段超えていると言うようになっているそうです。評論家のロナルド・モースもトヨタのレクサスは凄い。あれは工業製品ではなく、芸術作品であるといいます。
日本は、不景気な雰囲気が残っていますが、文化商品や芸術商品に関してはハングリーマーケットです。だから、ブランド物は売れる。趣味のものは売れている。そんな趣味や芸術品を作れない会社が潰れるのだと。

最近は成果主義だとか、科学的人事管理とでアメリカの真似をする会社が増えてきていますが、中級品をつくるなら成果主義でよいが、最高級の芸術とも呼べる製品をつくるなら日本式のこれまでの労働管理でよいのです。
高級品を作ろうとするのに、成果主義を取り入れて失敗する会社があります。中級品をつくるならそれでもいいのですが、日本が狙う市場は違います。中級品は、アメリカや中国に任せて、日本は高級品を日本式人事管理で作ればいいのです。

タイトルでいうように「質の経済」を考え直す必要があるようです。質とは何か。人間の脳は感性をどう捉えるのか。世界で日本の商品が評価されるということは、日本の質には普遍性があるらしいことなど。

日本が今後、生きていく道を考えるのに読んでみてもいいのではないでしょうか。

「質の経済」が始まった 美の日本、カネの米中 Book 「質の経済」が始まった 美の日本、カネの米中

著者:日下 公人
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2007年2月18日 (日)

10年後の日本

「10年後の日本」  「日本の論点」編集部編

2005年にヒットした本ですが、少し経ってから見てみました。1年少し前の予測ですから、大きな変更点はありません。自由競争が2極化を生み、勝ち組、負け組みに分かれるだけでなく、団塊の世代にも裕福な層と、不安な老後を送る層に2極化すると予想しています。
本書では、バブル崩壊後、幅広い分野で規制が緩和され、市場原理による「自由な競争」が激化したから、2極化が起こったとします。この辺は、2極化の理由について見解が分かれるところでしょう。
最近の考え方の傾向としては、バブルまでの経済体制が通用しなくなり、新興国の台頭してきた時代においては、古い経済では、非効率で、既得権者を保護してきた結果として、景気が悪くなり、結果として2極化してきたとも言われています。したがって、2極化をしないようにするためには、規制緩和とイノベーションによって経済の活性化を行うことによって、機会の平等や、効率化やイノベーションによる経済的成果を結果として多くの人々が分け合っていこうというものです。
本書では、やはり2005年の雰囲気が感じられます。
ただ、本書でも触れられていますが、フリーター層の問題は現在でも同様に存在しています。景気回復してきて、新卒の採用は増えているとはいえ、非正規雇用であるフリーターとなった年代については、このままでは日本経済の底辺を占めてしまい大きな問題となるでしょう。この辺りも、経済成長により、雇用のあり方を変革して行き、正規雇用に変えるなり、同一労働同一賃金にするなりする必要があるでしょう。
ただ、団塊の世代の2極化は深刻な問題かも知れません。悠々自適を謳歌するのは一握りの富裕層でしょう。この一部の富裕層のマーケットは重要ですが、そうでない人たちは厳しい。会社が必要と認めた人は、退職後に再契約などの道がありますが、会社から声がかからない人も多く、団塊の世代が700万人の規模でもあり、働き口の受け皿問題も大きくなるかも知れません。本書では相当心配していますが、これも経済成長があれば、貴重な労働力となるかも知れません。
労働問題としては、バブル入社組みを第2の団塊と呼び、大量採用された社員が社内で不良債権化するのではと心配しています。事実、成果主義の名のもとに淘汰が始まっているようです。無理なノルマや慣れない部署への配置転換で成績が上がらないようにして退職を迫るケースも増えています。

世代としては、70年代後半から80年代にかけて誕生し、両親とも戦後生まれのY世代に注目しています。Y世代は、経済成長を全く知らずに育った世代であり、バブル世代と違って、物質欲はさほど強くない層です。学歴信仰も崩壊した世代ですが、自分らしさを求め、文字文化に強かったりで、日本の新たな文化の担い手になるのではないかとのことです。10年後には、オタク文化に変わり、Y世代の文化が生まれているのではないかというのです。

10年後の数字を見ると、東京の人口がピークになるそうです。日本の人口が減少する中で、東京への一極集中化が進みます。2030年には日本の総人口は、2000年に比べ7.4%減少するのに、東京は0.7%増加、神奈川は1.6%増加すると予測されています。ただ、都心への一極集中は、老人層も都心に住むことになり、都心での老人ホームの需要も大きくなります。既に、有料老人ホームの建設ラッシュが始まっています。

本書はこのほかにも、環境問題や、長期金利が上がる問題なども取り上げています。
古本でも買って、さらっと読んでみるにはいい本かも知れません。

10年後の日本 Book 10年後の日本

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2007年2月17日 (土)

中国 大国の虚実

「中国 大陸の虚実」  日本経済新聞社編

昨年、中国は自動車保有台数で日本を抜き去り、米国に次ぐ世界第2位となりました。新聞で見たときはここまで来たかという感じでした。
最近の中国事情を日経が本書にコンパクトにまとめてくれています。

2004年、中国は貿易総額でも日本を抜き去り世界第3位に浮上しています。05年のGDPは、一気にフランスと英国を抜き去り、世界4位の経済大国となっています。中国を訪れたビジネスマンは、「中国と付き合わないことが今や最大のリスク」と語るようになっています。
90年代半ばまで、自転車が一般庶民の足だった国とは見違えるばかりです。
ここ数年のもっとも大きな変化は中国が完全に国際経済の一部に組み込まれたことです。世界の貿易総額に占める中国の比率は5年間で2倍近い7%近くに上昇しました。中国のGDPに占める貿易総額の比率は63%。日本の24%、米国の20%を大きく上回ります。中国自体も世界経済との関係を絶っては成り立たなくなっています。
しかし、単なる「中国経済の躍進」だけでは片づけられません。エネルギー消費効率の低い老朽設備を使って経済使って経済活動を拡大した結果が、原油輸入の急増であり、世界の石油需給の逼迫や大量の排出物による環境汚染といった問題も引き起こしている。環境破壊は東アジアの地域的規模で生態系に影響を与えているともされます。
越前くらげの漁業被害もそうですよね。

中国のエネルギー戦略はすごいものがあります。06年春の段階で、すでに35カ国のエネルギー権益に投資しています。06年からの5カ年計画で、海外の石油会社の買収などエネルギー分野に毎年7千億元を投じる計画だ。
米国エネルギー省がまとめた世界のエネルギー消費の予測によると、2030年の中国の石油消費量は日量1500万バレルと、03年実績の2.7倍に増える見通しです。
世界のエネルギーをブラックホールのように呑み込む中国。それでも需要を満たしきれていません。重慶のタクシー向けのガス充填所では、割り当てを絞っており、ガス欠のタクシーが充填待ちの行列を作っているようです。

エネルギー戦略には、米国が相当いらついてます。米国と仲が悪い国や制裁をしている国とエネルギー協力を取り付けたり、アフリカなど第3世界の国々を取り込もうと動いています。アメリカも負けじと、インドと協力関係を深め、インドへの原子力発電開発の協力から、F16やF18戦闘機の貸与、ミサイル防衛システムの協議も初め、中国を牽制しています。

また、中国には各国が工場を建設しています。日本や欧米はもちろんですが、04年の直接投資で日本や米国を抜いてトップに立ったのは韓国です。日本は逆に、国内景気の回復や最先端のものづくりを目指すために日本回帰が行われ、キャノンやシャープは国内に工場を建設しています。また、中国の労働力や土地代などのコスト上昇を嫌い、ベトナムやインドに進出する企業も多くなってきています。しかし、巨大市場という中国の魅力は衰えたわけではありません。新興国は物流や電気、通信網などインフラ整備の面では中国に見劣りしますし、中国戦略が企業の命運を左右する時代になったことには変わりはないでしょう。

世界の工場となっている中国ですが、世界の下請けや世界規格のものを作っているのでは、儲かりません。DVDプレイヤーなどを生産しても特許料を相当払わなければならず、中国では独自規格を作ろうとしています。06年5月には、「永中オフィス2007」というソフトを開発し、マイクロソフトと闘おうとしています。また、次世代DVD規格でも、EVDという規格を作ってきました。BDやHD-DVDより質は悪いものの、自国の大きな市場を押さえれば、チャイナスタンダードとして、世界も認めざるを得ないと考えています。

13億も人口を抱える中国の消費者を見てみましょう。貧乏人もたくさんいますが、一部が金持ちになっただけでも、モノは飛ぶように売れていきます。高額テレビや自動車が売れ、消費社会が本格的な姿を現してきています。ベンツやベントレーなど何台も揃える一部の購買力を持つものも出てきましたが、それより裾野の広い消費社会の申し子のような層が厚くなってきています。この層が中国消費の本当の主役です。給料をもらったらその月のうちに全部使い切ってしまう層の登場です。それもそこそこの給料を手にしながら、電話代や服や化粧品、友達との外食にと使います。このような若者を「月光族」と呼びます。この場合の「光」は中国語で「何も残っていない」という意味です。
ブランド衣料の「百図」や資生堂の「オプレ」が好みのOLが多いのですが、男性も同様です。彼らの消費の原動力は将来に何の危機感も持っていないことのようです。月光族の特徴は「自分の未来に自信があり、社会の中で比較的高い評価を受けたいと願っている。モノを買うときに必要かどうかではなく、自分の趣味にあっているかどうかを考える」といいます。大多数が月光族ではありませんが、月光族は中国人の憧れだそうです。
モノが溢れかえってきることと、一人っ子政策がとられて以降に育った世代なので、お金をかけられて育っており、消費生活がしっかりと身についてしまっているのでしょう。

また、新中間層を表す言葉として「小康族」というものがあります。胡錦濤国家主席がよく使う言葉で、やや裕福でまずまずの経済状態を意味します。ダブルインカムで自家用車で通勤し、お昼はセブンイレブンのおにぎりの新製品やお菓子を買って同僚と自慢しあうのだそうです。セブンは中国ではあまり数はないそうですが、価格は少し高めでも、そこにしかないものを買うことを求める人が多いようです。

消費社会とは別に、中国は軍事面でもプレゼンスを発揮しており、01年から05年の兵器購入料は世界最大だそうです。

米国、EU、日本に次ぐ、世界の第4極としての存在になったというこです。

中国に興味をもたれている方は、ジョージ秋山の「マンガ中国入門」は面白いですよ。中国の食肉文化や、売春婦が世界一多いとか、一般では読めないような話がてんこ盛りです。そちらも是非読んでみてください。

中国 大国の虚実 Book 中国 大国の虚実

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マンガ中国入門 やっかいな隣人の研究 Book マンガ中国入門 やっかいな隣人の研究

著者:ジョージ秋山
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2007年2月12日 (月)

プレイバック1980年代

「プレイバック1980年代」  村田晃嗣

単に1980年代の世相や事件を年毎に描いたものなのですが、懐かしく読んでしまいました。著者も、80年代に同志社で青春を過ごしたらしく、私は、社会人になって働き始めたばかりで、本書を読むと、その頃がよみがえってくるような気がしました。
80年代といえば、つい89年くらいの日本のバブル絶頂期を思い出してしまう私ですが、それはほんの最後で初めから辿っていくといろいろなことがあり、全てがいい時代だともいえないことに気がつきました。

かいつまんで、年ごとの事件を書き連ねていきましょう。

1980年
アーウーの大平総理の死去。イラン・イラク戦争勃発。MANZAIブーム。山口百恵引退。

1981年
この年になって、やっと中国残留孤児調査始まる。(戦争終わって何年経ってると思ってんの) 日米に同盟という言葉が使われる。鄧小平が政権を握り、文化大革命を批判。アメリカで同性愛者の間で謎の病気が流行る。(後のエイズ)

1982年
イスラエルがレバノンに侵攻。ヒズボラが結成される。テレホンカードの公衆電話が登場。松田聖子やマッチ活躍。深夜放送を聴きながら受験勉強。

1983年
おしんがブーム。ロンーヤス時代始まる。日本が一流と思う人増える。ファミコン発売。

1984年
韓国の人の名前を現地音読みのカタカナ表記になる。三浦和義の銃弾の疑惑事件。グリコ・森永事件。写真週刊誌ブーム(フォーカス、フライデー)。「キャプテン翼」「ドラゴンボール」など人気。風の谷のナウシカ映画化。DCブランドの人気。「マル金・マルビ」流行。

1985年
ゴルビー登場。アメリカの貿易赤字が1485ドルに上り、内対日赤字が1/3。プラザ合意で1ドル240円前後から年末には200円へ。1980年と比べると、全国の土地資産額は、1千兆円から、2千4百兆円に。株式時価総額は240兆円から、590兆円に増大。日本の地価総額で、国土が20倍ある米国を買えるといわれた。
アフリカの飢饉に「ウィー・アー・ザ・ワールド」。男女雇用均等法始まる。エイズ蔓延。
スーパーマリオ流行。日航123便御巣鷹山に墜落。阪神タイガース優勝。金妻ブーム。

1986年
チェルノブイリ原発爆発。9千人以上死亡。ジャパンプロブレムに対し、前川レポート作成。リビアのテロ攻撃に怒り、アメリカがリビア空爆。
岡田有紀子自殺で後追い自殺増える。メンズノンノ創刊。マハラジャ大盛況。ワンレン、ボディコン。

1987年
NTT株に殺到。JR発足。バブルが膨張、東京の地価は前年度比53.9%上昇。10月19日NYブラックマンデー。これの対策で、低金利政策をとり、バブルを増長。大韓機爆破事件でキム・ヒョンヒ逮捕。日本人拉致者に日本語習うと自供。レーガンがゴルビーにINF交渉を飲ます。安田火災が53億円のゴッホのひまわりを買う。「サラダ記念日」「ノルウェイの森」流行。

1988年
消費税国会決議で、社会党の牛歩戦術。リクルート事件。昭和天皇病気で600万人が記帳。(私も皇居前で記帳しました) 高級車シーマが爆発的に売れ、シーマ現象という言葉が生まれる。

1989年
天皇陛下崩御。1901年生まれの陛下の死で、実質的な20世紀は終わりか。90年代は21世紀的。(バブル崩壊とネット社会の到来で80年代とちょっと雰囲気が違うかな)
ハンガリー複数政党制復活。ソ連アフガンから撤退。ベトナムもカンボジアから撤退。天安門事件で大虐殺。ワルシャワで連帯が自由選挙で圧勝。8月19日に1千人の東ドイツ市民がオーストリアに脱出。19月東独ホーネッカー辞任。ハンガリーが共和国に。11.9ベルリンの壁崩壊。(12年後には、9.11同時爆破テロ)マルタ沖の船でレーガンとゴルビーが会談し、冷戦の終わりを確認。ルーマニアではチャウシェスクが捕まり銃殺。
宮崎勉事件、酒鬼薔薇聖斗事件。ソニーがコロンビア映画買収。

プレイバック1980年代 Book プレイバック1980年代

著者:村田 晃嗣
販売元:文藝春秋
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2007年2月11日 (日)

下流喰い

「下流喰い」-消費者金融の実態- 須田慎一郎

アイフルの取立て問題や出資法の上限金利引き下げ、更に現状の格差問題を絡めて、実態をルポルタージュしています。
庶民階層の痛み具合を浮き彫りにする数字があります。05年の個人破産件数は18万4千人を上回り、十年前の住専処理に明け暮れた96年と比べると4倍以上の増加となっています。
消費者金融とは、貸金業規制法に基づいて無担保、無保証で融資するノンバンクのひとつで、一般にはサラ金と呼ばれている貸金業者をさします。
大手各社の業績も96年以降、毎年10%強の伸びを示し、アコム、武富士、アイフル、プロミスの現・大手4社とも営業収益は3500億円を超える。経常利益も最低ラインでも約700億円超、貸付残高は軒並み1兆5千億円を超え、合計すると約7兆円のボリュームになります。(06年3月期)
今や、消費者金融の市場規模は業界調べでざっと20兆円。消費者金融やクレジット各社が利用者に供与した金額を見てみると、住宅ローンを除いた学派03年の段階で約73兆円です。この73兆円という数字は、同年のGDP中に占める民間消費支出282兆円の4分の1です。いかに巨大なマーケットに成長したかがわかります。
一般にクレジットや消費者金融などの借金がかさみ、返済困難な状況に陥っている多重債務者の総数は、現在、推定で約356万人いると考えられています。
その中には、債鬼に追われて失踪したり、自殺に追い込まれたり、年利換算で2000%近い暴利を貪るヤミ金融の餌食となり、全てを奪われた挙句、行方知れずになっている・・・これも日本の現実です。

出資法の29.2%と金利規制法(100万円で15%)の間のグレーゾーン金利は最高裁の判例で認められず、国会でもグレーゾーン撤廃に動きました。
消費者金融会社やクレジット会社は、店舗廃止や人員削減でリストラをはかったり、消費者に返金を迫られた場合に備えて引き当て金を積んだりしています。
今後、貸し出し金利が下がることになりますが、消費者金融業者は、なぜ困っているのでしょう。

本書では、ビジネスモデルが悪魔的だからだと指摘しています。著者が以前、武富士に聞いたところ、年収1000万円の者がいきなり、50万円貸してくださいと来ても、断ることがあるとのことでした。収入が500万も600万もある人には、カネを貸さないそうです。せいぜい年収400万円まで。とくに、年収200万から300万の客が上顧客だそうです。上顧客というのは、子供がおり、住宅ローンもあり、家計のやりくりに困っていて恒常的に金欠状態にある人らしいです。こういう人は、業者としては長いお付き合いが期待でき、金利だけを払い続けるような優良顧客となるのだそうです。大手消費者金融5社の調査(02年度)によれば、新規顧客の71.9%が男性で、年代別構成は30歳未満が44.1%、次に30歳以上40歳未満が23%となっています。年収も新規顧客の81.2%が500万円未満となっています。

大手消費者金融でもトラブルを起こして新聞沙汰になりますが、こわいのは、ヤミ金融です。昔は、貸金業登録の有無が見分けに使われましたが、今はもうそんな時代ではなくなったといいます。神田や新橋周辺の捨て看板やサンドイッチマンが宣伝する携帯電話だけを広告しているような金融やは「090金融」と呼ばれています。このほかにも、債務者が所有する自動車や家具をいったん買い取った形をとった「リース金融」、キャッシング枠だけでなく、カードの利用枠を使って金券やブランド品を購入させ、それを故買商に売って現金化させる「金券金融」「チケット金融」も良く知られているヤミ金です。
やみ金にとって貸付そのものは単なる入り口にすぎず、大事なのは回収であり、そこに意味があるとされます。要は、貸付金利を増やしさえすれば、貸付額が事実上、増やしたことに等しく、回収額はいくらでも増やしていけるといいます。最初に借りた10万円が気がつけば300万円になっている。債務者としては実に不思議なのだが、その無理を厚顔と恫喝で押し通すのがやみ金なのです。
特に、現在では、大手とヤミ金の2極分化が進んでいるようです。特にタチの悪いヤミ金は、携帯と銀行口座を用意して、まさにオレオレ詐欺と同じです。また、自己破産した人を官報から名簿化して、その名簿を売る輩もおり、破産者に金を貸すヤミ金もいるそうです。破産者に無理やりカネを振り込み、それを使ってしまうと、勤務先や親戚、知人にむちゃくちゃな催促、恫喝が行われます。

貸出金利が下がると、メガバンクの傘下になる大手サラ金と暗躍振りで注目を集めるヤミ金に2極化が進むのではないかと著者は心配します。たぶん、中小の貸金業者の経営は成り立たないだろうと。

最後に、著者のするどい言葉を紹介します。テレビでは大手消費者金融がアリバイ工作的に「ご利用は計画的に」といっているが、むしろ「貸し出しは計画的に」と業界内部に徹底させることだと。

下流喰い―消費者金融の実態 Book 下流喰い―消費者金融の実態

著者:須田 慎一郎
販売元:筑摩書房
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2007年2月10日 (土)

超・格差社会アメリカの真実

「超・格差社会 アメリカの真実」 小林由美

格差問題の本が多い中、本書は26年間も米国暮らしの女性が、米国の社会構造から説明して、日本で話題になっている格差に切り込んでいきます。最近、日本が階層化してきているといわれている原因はアメリカ型市場経済の導入やグローバリゼーションの影響があるといわれていますが、日本がアメリカと同じようになってきたいうことは本当かどうかを米国在住26年の著者が実感とともに伝えてくれます。

まず、アメリカの現実です。アメリカに住んでいると、この国は4つの階層に分かれた社会だとつくづく思うそうです。その4階層とは「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」であると。
一番上の「特権階級」とはアメリカ国内に400世帯前後いるとされます。純資産10億ドル(1200億円)以上の金持ちと。5000世帯強と推測される純資産1億ドル(120億円)以上の金持ちで構成されています。その下に位置するのが、35万世帯前後と推測される純資産1000万ドル(12億円)以上の富裕層と、純資産200万ドル以上でかつ年間所得20万ドル以上のアッパーミドルクラスからなる「プロフェッショナル階級」です。
「特権階級」と「プロフェッショナル階級」の上位2階層を合わせた500万世帯前後、総世帯数の上位5%未満の層に、全米の60%の富が集中しています。
残り95%が「貧困層」「落ちこぼれ」だとすると、1960年代に日本人がテレビドラマで見た憧れだった中産階級はどこにいったのでしょか。その中産階級は、70年代以降、徐々に二分化しており、その一部は専門スキルやノウハウを磨き「プロフェッショナル階級」へステップアップしたが、メーカーなどに働く中産階級の大半は「貧困層」への道を辿ったそうです。
著者が昔アメリカへ行ったときに感じたことは、人々は親切でオープンだし、無知や貧困は本人の責任とみなさず、わからないことや困ったことがあれば、政府機関や民間組織も喜んで助けてくれる。みんな自由に発言し、夢を追ってのびのびと生きている。新しい産業が、新しい技術が、新しいライフスタイルが次から次へと生まれていく。アメリカの社会はいつもエネルギーに満ちている。でも、これが人類の求める究極の社会かというと、アメリカの本質を理解した人ならためらうことなく、ノーと答えるだろうと。わずか5%の人が富の60%を持っている現実を見たら、本当に「自由」で「平等」で「民主的」な国だと素直に受け入れられないだろう。
アメリカには、理念と現実の間に隠しようのないさまざまな乖離があるし、その事実を多くの人が感じている。それにも関わらず、形骸化しつつある理念や理想を常に唱え、それを信じて行動しようとする二重心理。それとさまざまな乖離を埋めていくことが出来ると思うオプティミズム。ここにこそアメリカを理解する鍵があるのだといいます。

本書は、米国の歴史から説き起こしていきますので、アメリカ史の勉強にもなります。
なぜ、アメリカ人は特権階層に怒りもせず、「機会の平等」を信じているのでしょう。事実、1980年代以降の情報革命により、ビル・ゲイツを筆頭に多くの新興成金が登場してきましたし、発展途上国からの移民も、下働きから始まり、3世代くらい立つと「プロフェッショナル」になれることも事実です。趣味をビジネスにしたり、培ったスキルやノウハウ、コネを使って金儲けすることはアメリカでは見苦しいことでもいやらしいことでもなんでもない。要するに、金儲けをすることが正しいことであると素直に考えている。
また、How Are You?とたずねられれば、たいていAll Rightとかと応えて、弱音を見せることはない。愚痴を口にはしない。日本人やヨーロッパ人とは全く感性が違う。反面、ストレスは非常に高い。アメリカ人との会話は、オプティミズムに溢れており逆に誰と話しても金太郎飴的に会話になる。一方で移民は、新しい社会に溶け込むために努力し、周囲の人と同じような考え方、行動をすることになり、話題も同じ、意見も同じになる。それが長い間繰り返され、アメリカは文化の多様性がある反面で、公表される意見や目に見える行動には驚くほど標準化されている。
アメリカ人のオプティミズムの底辺にあるのは、「人生こうあるべき」とか、典型的なキャリアコースが存在しないのではないかといいます。「人生は楽しむべきもの」という基本的な人生観も大きな要素です。

自由・平等・民主主義を標榜し、自由競争で活発な市場経済を誇るアメリカ。でもそこにあるのは、封建国家まがいの超・格差社会。それでも人々は明るく元気で、科学やビジネス、技術、スポーツ、芸術などさまざまな分野でクリエイティビティが発揮され、そこで生まれたアメリカン・ライフ・スタイルは依然として世界中に波及していく。
著者が26年前にアメリカに行って感じたことは、やりたいことを追いかけるのは正しいこと、嫌なことにははっきりノーということ、服装やマナーもない、人間関係の上下関係もない、要するに、感じる通り、欲するとおりに行動し、生きることを容認してくれる国だということだった。日本に限らず、伝統的な国から来た人にとっては、「これが自由なんだ」と実感する、生きていて良かったと思う、これがアメリカのすばらしいところなのだろう。

格差が問題になっていることはアメリカでは資産の格差であり、日本では給与や賃金の問題なのだろう。
アメリカは機会平等でスタートし、人々が自由に生きることを容認して、自由を実現した。しかし、平等が後回しにされ、その結果生じた不平等は、個人が自由に生きる機会をも奪いつつある。他方、日本は、個人の自由を後回ししにして、世界でも最高水準の平等を達成した、しかし、人々の精神的な束縛は、今、社会秩序が崩れつつある中で、むしろ強まっているように見える。その原因は、現象面で見れば、平等を維持するために互いに牽制しあう圧力が増して、身動きが取れなくっている。
が、その圧力が増している原因は、アメリカの影響で精神的な成長がないがしろにされ、独立した自由な精神や自尊心を見失ってきたことにあるのではないだろうか。

超・格差社会アメリカの真実 Book 超・格差社会アメリカの真実

著者:小林 由美
販売元:日経BP社
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2007年2月 4日 (日)

RNAルネッサンス

「RNAルネッサンス」  田原総一朗・中村義一

DNAについては、たくさん本も出ているし、何かにつけて遺伝子の話はそこら中で聞きますが、RNAは影の存在であまり話しに聞きません。知っている人でも、RNAといえば、DNAの情報を運ぶだけの存在と思っていた人もいるかも知れません。
DNA解読競争では、世界に遅れをとってしまった日本ですが、RNAはまだ未知の部分が多く、日本にチャンスは残されているのです。
本書は、田原総一朗が、東大教授で、日本のRNA研究の第一人者である中村氏に聞いていく対談集です。

DNAはほぼ解明されてきて、人の遺伝子も寄生虫の一つである線虫もほぼ同じだとわかっています。でも、人と小さな線虫は同じ遺伝子数なのにどうして、こうも違うのでしょう。人はとっても複雑で、ものも考えますし、新しいものも作ります。DNAが変わらないとすれば何が違うのでしょうか。
DNAは同じでも、RNAに違いがあるのです。RNAはDNAとDNAをつなぐ通信網みたいなもので、人のRNAは下等動物に比べて相当発達した通信網の役割を果たしているのだそうです。人のRNAによる通信網はインターネットどころではなく、相当緻密に張り巡らされているのです。
下等動物の通信網というのは、電話線みたいなもので、どこかの家に電話すのにいちいち持ち上げてダイヤルを回して電話をする感じですが、これに対してインターネット的なものが人のゲノムで、どこかのウェブサイトに入って、そこからいろいろなところにアクセスできる、それから、たちどころに検索も出来る。情報ネットワークが発達しているということです。

通信網の正体がRNAだとわかってきて、多くの人の注目が集まってきているのです。
では、RNAの役割とは何なのでしょうか。その第一の役割は、まず遺伝子配列をコピーすることです。RNAはDNAから、たんぱく質を作るのに必要な「暗号」を写し取ります。この写し取るRNAはメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれます。
次に役割は、たんぱく質を作る装置であること。その装置は大きなマシンですが、RNAをマシン建築の芯にしたり、柱にしたり、RNAという素材を使って、それを動かしています。つまり、たんぱく質の合成をRNAが行うわけです。
これまで、RNAの役割は以上だと思われ、RNAの98%くらいは、ジャンクRNAと呼ばれ、ガラクタ扱いされていました。
ジャンク以外の2%のRNAは実は線虫にあるんだけど、98%は人間しかないのです。
だから、本文の最初のほうで、ジャンクRNAがネットワークの要ではないかと考えたのが、中村先生だったのです。ジャンクといわれていたものが実は宝の山だったとわかり始めてきたのです。ここは、アメリカもヨーロッパもまったく手つかずなので、今こそ正体をはっきりさせるちょうど良い時期にあるのです。
RNAの解明が進めば、医療の世界にも影響が大きそうです。新薬の開発も出来る可能性が大きいのです。しかし、研究の予算を文部科学省に行って、要求するのですが、アメリカやヨーロッパが研究していないものにカネは出さないと言われるそうです。先進国が価値を認めてからでは、もう遅いのです。DNA研究のときもそうです。日本は、早くからイネのゲノム研究などから出発していましたが、ヒトゲノムではアメリカなどに抜かれてしまいました。日本は有用性が確認されるまで、カネは出さないというお役人らしさがいつまでも抜け切れません。また、薬品メーカーも、海外に比べると小さな会社ばかりで、研究開発に投資するカネはありません。
中村先生も東大になっていずに、アメリカやイギリスの大学に行けば、ノーベル賞を取れる研究ができるのでしょうに。

RNAルネッサンス 遺伝子新革命 Book RNAルネッサンス 遺伝子新革命

著者:田原 総一朗,中村 義一
販売元:医薬経済社
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2007年2月 3日 (土)

まっとうな経済学

「まっとうな経済学」  ティム・ハーフォード

著者は、フィナンシャル・タイムズ・マガジンのコラムニストであり、世界銀行グループの国際金融公社の主任ライターであり、オックスフォード大学の経済学部の講師であり、石油会社のエコノミストでもある。
単なる象牙の塔の中の経済学者ではなく、現実社会を理解し、一杯の駅で売っているカプチーノから、交通渋滞、中古車市場、医療、貧困、貿易、地球環境まで、人間の営みに光をあて、経済学的に考えて行きます。

著者も、最初に本書の目的は、みなさんが経済学者の視点に立って世界を見つめる手助けをすることにあると言っています。

スターバックスで少し高い値段のコーヒーをなぜ買うのかを、1817年に書かれたリカードの農業分析から説き起こします。リカードのモデルは、希少性と交渉力の関係を論じるのに役立つといいます。
ただ、経済モデルは単純化されているため、得てして経済学者は道を誤りがちだといいます。リカードのモデルで全てを説明できるわけではないので、それを理解しながら、経済原理を説明したり、正しく理論を応用すれば、環境問題についても、環境法と所得配分などの関係を理解できるといいます。
経済学とは何のための学問なのでしょう。経済とはGDPなどの死ぬほど退屈な統計の集まりではないはずです。経済学とは、誰が、何を、どのような理由で手に入れるのかを知る学問であると。この意味では、きれいな空気や円滑な交通は「経済」の一部である。ただ、人生には経済指標では測れるよりずっと大切なことがあり、それは経済学者だって知っています。逆に、その大切なものの効用によってGDPが上下したりするのですが。

著者のスタンスは、自由市場主義だ。弱肉強食と言うのではなく、不自然な保護政策や規制をはずし、既得権益のない自由市場にゆだね、最適なコストで経済を回そうとします。
フェアトレードに対しても、既存の見方とは違います。フェアトレード商品といって、少し高い値段でも買おうとする人は多いですが、その少しのカネで、アフリカの貧困がどれだけ救えるのかという疑問を投げかけます。ナイキなどは貧困な国の低賃金の労働者を使って非難を浴びたりしますが、だから、不買運動をしてもいいのだろうかと。低賃金でも、何もないより、その人々にとっては、いいはずだと。搾取といわれるかもしれないが、極貧より、低賃金でもそのほうがいいのです。精神性の世界でのお話ではなく、経済的に何が正しいのかを考えなければならないのです。自由貿易は誰にとっても善だといっているのではないが、感情に流されずに考えなければなりません。

グローバル化についても著者は言及しています。最貧国は、グローバル化によってもっと貧しくなるとか、先進国に搾取されるかと言った論議がありますが、著者の調べによれば、最貧国と呼ばれている国がグローバル化と呼ばれている世の中で、先進国と貿易をしているなんてほんのちっぽけな割合でしかなく、グローバル化の影響を受けるわけはないと言います。現実を正しくみれば、情緒に訴えたマスコミに踊らされず、単にグローバル化という名に善か悪かのレッテルを張ることを戒めているように思えます。
中国の大躍進も搾取工場で働かされた労働者があったからこそ、今の中国があります。誰が、搾取といわれる行為を責めることができるのでしょう。これは極めて難しい問題です。

しかし、経済学は、単に数字を追うのではなく、人間を追う学問であり、人間がよりよい生活を得られるのに使われる学問であるといいます。経済学は合理性一辺倒ではなく、意外と人間的なものである。経済を動かすのは結局は「人」であり、人を動かすのは、「心」である。
著者は、さすがに市井の経済学者であり、さめた目で、現実とその中にある経済の原理を見ぬきます。タイトルの「まっとうな」という言葉も本書を読めばさすがと思わせます。(原著はThe Undercover Economistで、覆面経済学者という意味です)

まっとうな経済学 Book まっとうな経済学

著者:ティム・ハーフォード
販売元:ランダムハウス講談社
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