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2007年2月10日 (土)

超・格差社会アメリカの真実

「超・格差社会 アメリカの真実」 小林由美

格差問題の本が多い中、本書は26年間も米国暮らしの女性が、米国の社会構造から説明して、日本で話題になっている格差に切り込んでいきます。最近、日本が階層化してきているといわれている原因はアメリカ型市場経済の導入やグローバリゼーションの影響があるといわれていますが、日本がアメリカと同じようになってきたいうことは本当かどうかを米国在住26年の著者が実感とともに伝えてくれます。

まず、アメリカの現実です。アメリカに住んでいると、この国は4つの階層に分かれた社会だとつくづく思うそうです。その4階層とは「特権階級」「プロフェッショナル階級」「貧困層」「落ちこぼれ」であると。
一番上の「特権階級」とはアメリカ国内に400世帯前後いるとされます。純資産10億ドル(1200億円)以上の金持ちと。5000世帯強と推測される純資産1億ドル(120億円)以上の金持ちで構成されています。その下に位置するのが、35万世帯前後と推測される純資産1000万ドル(12億円)以上の富裕層と、純資産200万ドル以上でかつ年間所得20万ドル以上のアッパーミドルクラスからなる「プロフェッショナル階級」です。
「特権階級」と「プロフェッショナル階級」の上位2階層を合わせた500万世帯前後、総世帯数の上位5%未満の層に、全米の60%の富が集中しています。
残り95%が「貧困層」「落ちこぼれ」だとすると、1960年代に日本人がテレビドラマで見た憧れだった中産階級はどこにいったのでしょか。その中産階級は、70年代以降、徐々に二分化しており、その一部は専門スキルやノウハウを磨き「プロフェッショナル階級」へステップアップしたが、メーカーなどに働く中産階級の大半は「貧困層」への道を辿ったそうです。
著者が昔アメリカへ行ったときに感じたことは、人々は親切でオープンだし、無知や貧困は本人の責任とみなさず、わからないことや困ったことがあれば、政府機関や民間組織も喜んで助けてくれる。みんな自由に発言し、夢を追ってのびのびと生きている。新しい産業が、新しい技術が、新しいライフスタイルが次から次へと生まれていく。アメリカの社会はいつもエネルギーに満ちている。でも、これが人類の求める究極の社会かというと、アメリカの本質を理解した人ならためらうことなく、ノーと答えるだろうと。わずか5%の人が富の60%を持っている現実を見たら、本当に「自由」で「平等」で「民主的」な国だと素直に受け入れられないだろう。
アメリカには、理念と現実の間に隠しようのないさまざまな乖離があるし、その事実を多くの人が感じている。それにも関わらず、形骸化しつつある理念や理想を常に唱え、それを信じて行動しようとする二重心理。それとさまざまな乖離を埋めていくことが出来ると思うオプティミズム。ここにこそアメリカを理解する鍵があるのだといいます。

本書は、米国の歴史から説き起こしていきますので、アメリカ史の勉強にもなります。
なぜ、アメリカ人は特権階層に怒りもせず、「機会の平等」を信じているのでしょう。事実、1980年代以降の情報革命により、ビル・ゲイツを筆頭に多くの新興成金が登場してきましたし、発展途上国からの移民も、下働きから始まり、3世代くらい立つと「プロフェッショナル」になれることも事実です。趣味をビジネスにしたり、培ったスキルやノウハウ、コネを使って金儲けすることはアメリカでは見苦しいことでもいやらしいことでもなんでもない。要するに、金儲けをすることが正しいことであると素直に考えている。
また、How Are You?とたずねられれば、たいていAll Rightとかと応えて、弱音を見せることはない。愚痴を口にはしない。日本人やヨーロッパ人とは全く感性が違う。反面、ストレスは非常に高い。アメリカ人との会話は、オプティミズムに溢れており逆に誰と話しても金太郎飴的に会話になる。一方で移民は、新しい社会に溶け込むために努力し、周囲の人と同じような考え方、行動をすることになり、話題も同じ、意見も同じになる。それが長い間繰り返され、アメリカは文化の多様性がある反面で、公表される意見や目に見える行動には驚くほど標準化されている。
アメリカ人のオプティミズムの底辺にあるのは、「人生こうあるべき」とか、典型的なキャリアコースが存在しないのではないかといいます。「人生は楽しむべきもの」という基本的な人生観も大きな要素です。

自由・平等・民主主義を標榜し、自由競争で活発な市場経済を誇るアメリカ。でもそこにあるのは、封建国家まがいの超・格差社会。それでも人々は明るく元気で、科学やビジネス、技術、スポーツ、芸術などさまざまな分野でクリエイティビティが発揮され、そこで生まれたアメリカン・ライフ・スタイルは依然として世界中に波及していく。
著者が26年前にアメリカに行って感じたことは、やりたいことを追いかけるのは正しいこと、嫌なことにははっきりノーということ、服装やマナーもない、人間関係の上下関係もない、要するに、感じる通り、欲するとおりに行動し、生きることを容認してくれる国だということだった。日本に限らず、伝統的な国から来た人にとっては、「これが自由なんだ」と実感する、生きていて良かったと思う、これがアメリカのすばらしいところなのだろう。

格差が問題になっていることはアメリカでは資産の格差であり、日本では給与や賃金の問題なのだろう。
アメリカは機会平等でスタートし、人々が自由に生きることを容認して、自由を実現した。しかし、平等が後回しにされ、その結果生じた不平等は、個人が自由に生きる機会をも奪いつつある。他方、日本は、個人の自由を後回ししにして、世界でも最高水準の平等を達成した、しかし、人々の精神的な束縛は、今、社会秩序が崩れつつある中で、むしろ強まっているように見える。その原因は、現象面で見れば、平等を維持するために互いに牽制しあう圧力が増して、身動きが取れなくっている。
が、その圧力が増している原因は、アメリカの影響で精神的な成長がないがしろにされ、独立した自由な精神や自尊心を見失ってきたことにあるのではないだろうか。

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著者:小林 由美
販売元:日経BP社
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