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2007年2月 3日 (土)

まっとうな経済学

「まっとうな経済学」  ティム・ハーフォード

著者は、フィナンシャル・タイムズ・マガジンのコラムニストであり、世界銀行グループの国際金融公社の主任ライターであり、オックスフォード大学の経済学部の講師であり、石油会社のエコノミストでもある。
単なる象牙の塔の中の経済学者ではなく、現実社会を理解し、一杯の駅で売っているカプチーノから、交通渋滞、中古車市場、医療、貧困、貿易、地球環境まで、人間の営みに光をあて、経済学的に考えて行きます。

著者も、最初に本書の目的は、みなさんが経済学者の視点に立って世界を見つめる手助けをすることにあると言っています。

スターバックスで少し高い値段のコーヒーをなぜ買うのかを、1817年に書かれたリカードの農業分析から説き起こします。リカードのモデルは、希少性と交渉力の関係を論じるのに役立つといいます。
ただ、経済モデルは単純化されているため、得てして経済学者は道を誤りがちだといいます。リカードのモデルで全てを説明できるわけではないので、それを理解しながら、経済原理を説明したり、正しく理論を応用すれば、環境問題についても、環境法と所得配分などの関係を理解できるといいます。
経済学とは何のための学問なのでしょう。経済とはGDPなどの死ぬほど退屈な統計の集まりではないはずです。経済学とは、誰が、何を、どのような理由で手に入れるのかを知る学問であると。この意味では、きれいな空気や円滑な交通は「経済」の一部である。ただ、人生には経済指標では測れるよりずっと大切なことがあり、それは経済学者だって知っています。逆に、その大切なものの効用によってGDPが上下したりするのですが。

著者のスタンスは、自由市場主義だ。弱肉強食と言うのではなく、不自然な保護政策や規制をはずし、既得権益のない自由市場にゆだね、最適なコストで経済を回そうとします。
フェアトレードに対しても、既存の見方とは違います。フェアトレード商品といって、少し高い値段でも買おうとする人は多いですが、その少しのカネで、アフリカの貧困がどれだけ救えるのかという疑問を投げかけます。ナイキなどは貧困な国の低賃金の労働者を使って非難を浴びたりしますが、だから、不買運動をしてもいいのだろうかと。低賃金でも、何もないより、その人々にとっては、いいはずだと。搾取といわれるかもしれないが、極貧より、低賃金でもそのほうがいいのです。精神性の世界でのお話ではなく、経済的に何が正しいのかを考えなければならないのです。自由貿易は誰にとっても善だといっているのではないが、感情に流されずに考えなければなりません。

グローバル化についても著者は言及しています。最貧国は、グローバル化によってもっと貧しくなるとか、先進国に搾取されるかと言った論議がありますが、著者の調べによれば、最貧国と呼ばれている国がグローバル化と呼ばれている世の中で、先進国と貿易をしているなんてほんのちっぽけな割合でしかなく、グローバル化の影響を受けるわけはないと言います。現実を正しくみれば、情緒に訴えたマスコミに踊らされず、単にグローバル化という名に善か悪かのレッテルを張ることを戒めているように思えます。
中国の大躍進も搾取工場で働かされた労働者があったからこそ、今の中国があります。誰が、搾取といわれる行為を責めることができるのでしょう。これは極めて難しい問題です。

しかし、経済学は、単に数字を追うのではなく、人間を追う学問であり、人間がよりよい生活を得られるのに使われる学問であるといいます。経済学は合理性一辺倒ではなく、意外と人間的なものである。経済を動かすのは結局は「人」であり、人を動かすのは、「心」である。
著者は、さすがに市井の経済学者であり、さめた目で、現実とその中にある経済の原理を見ぬきます。タイトルの「まっとうな」という言葉も本書を読めばさすがと思わせます。(原著はThe Undercover Economistで、覆面経済学者という意味です)

まっとうな経済学 Book まっとうな経済学

著者:ティム・ハーフォード
販売元:ランダムハウス講談社
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