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2007年4月 7日 (土)

心にナイフをしのばせて

心にナイフをしのばせて Book 心にナイフをしのばせて

著者:奥野 修司
販売元:文藝春秋
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「心にナイフをしのばせて」 奥野修司

本書は、被害者と加害者の人生を描くことにより、被害者の保護が、加害者の救済に比べていかに劣っているかをいやというほど示してくれているノンフィクションです。
舞台は、1969年の春、今や横浜では中学受験では御三家に次ぐ進学校のサレジオ学園です。
一人の高校生が同級生にナイフでずたずたにされたあげく、首まで切り落とされて殺されました。
その後の被害者の家族は悲惨な運命をたどります。母親は、精神的におかしくなっていましい、著者が母親に取材しても、息子が死んで以降の1、2年の期間の記憶が無くなっているのです。それもそのはず、妹に取材をすると母親は葬式や法事では気を失ってしまい、違う人格が現れたり、何年も寝込んでいたりしていたのです。
当然、家庭は崩壊状態で、妹も手首を切ったり、50代になった今でもPTSDに悩みます。
当時の未成年の犯罪では殺人であっても少年院に2年も入れば、あとは何もなかったことになっていたのです。一人の命を奪った少年は、少年院で国家から無償の教育を受け、少年院を退院したあとも最高学府に入って弁護士になります。
一方、わが子を奪われた母親は、今や年金でかろうじてその日暮らしをしている。事件当時、慰謝料700万を殺人犯の親が支払うことになっていましたが、40万払っただけで、あとは払っていません。弁護士になった殺人犯は、法的にも親の支払うべき慰謝料を払う義務はないので、払うつもりもありません。まして、少年院で罪を償ったので、被害者に謝罪の言葉もありません。
30年以上が経過しても被害者は、今もあの事件を引きずっていますし、きっと生涯癒されない日々を過ごすのでしょう。

国家は犯罪者の更正にはコストをかけています。つまり税金を投入しているのですが、犯罪被害者のケアにはあまりにも知らん顔です。

著者がとりわけ驚かされたことは、母娘とも加害者を恨んでいなかったことだといいます。恨まなかったのは、自分たちの家族を回復させ、本来の姿を取り戻すことに精一杯で、加害者を恨む余裕が無かったためだと知ったとき、あらためて事件のすさまじい破壊力を知らされたといいます。

今、弁護士になっている犯罪者は、少年院で償いは済ませたといいますが、本当に更正したというのは、被害者家族に心から詫びたときではないでしょうか。

著者が弁護士を探し出し、被害者の母がその弁護士に電話をかけたときに、金に困っているのなら、50万なら貸してやるから、印鑑証明と実印を用意しとけと言い放ちます。それより、自分の親が払えなかった慰謝料を代わって払わせていただきますというのがせめても人間としての言葉でしょう。

殺人者は国が税金をかけて世に送り出し、殺人者を更正させたことにして、せっせと金儲けに励んでいるのに、被害者家族は今も苦しんでいる。
税金のかけ方を間違っているのではないでしょうか。

重苦しい気持ちの残る一冊でした。でも知っておくべき書であることは確かですし、多くの人に読んでもらいたいと思います。

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